サイレント映画

サイレント映画は、音声・音響、特に俳優の語るセリフが収録されていない映画のことである[1]。無声映画(むせいえいが)とも呼び、対概念はトーキー(発声映画)である。サイレント映画のフィルムには音声トラックが存在しないが、トーキーフィルム登場後に音声トラックに劇伴を収録したサイレント映画を「サウンド版」、さらに日本では活動弁士による解説も収録したサウンド版を「解説版」と呼ぶ。

19世紀後期の映画の発明以降、1927年(昭和2年)に世界初のトーキー『ジャズ・シンガー』が発表され、実用化、トーキーへの完全移行までの約40年間、商業的に世界各国で製作・公開されていた映画はすべてがサイレント映画であった。サイレント期の劇映画は、パントマイム演技とカットタイトルの字幕によるセリフ・ト書きで表現する芸術であったが、日本では、各常設活動館(現在の映画館)に常駐した活動弁士による生の解説に負うところが大きかった。

日本では、1930年代前半(昭和初年)にトーキーに移行し始めたが、剣戟映画を中心に1938年(昭和13年)まではサウンド版を含めたサイレント映画が製作・公開されていた。

略歴・概要

世界最初の映画は、1888年(明治21年)にルイ・ル・プランスが生み出した。オークウッド・グランジ庭園を歩き回る人々を撮影した上映時間2秒の作品で、タイトルは『ラウンドヘイ・ガーデン・シーン』 Roundhay Garden Scene である。モーション・ピクチャー(活動写真)の芸術・技術は、「サイレント期」と呼ばれる時代に全面的に成熟し、その後1920年代末に、発声映画(トーキー)にとって替わった。多くの映画学者らは、新しく到来した「トーキー」に監督や俳優、スタッフたちが適応するまでの数年間、映画の美的クォリティは減少したと指摘している。

サイレント映画の映像美、とりわけ1920年代に製作された作品のクォリティは極めて高度である。しかしながら、一般には、原始的なものであり現代人の鑑賞に堪える代物ではないとの誤解が広く存在する。誤った速度で映写されるなどの技術的エラーや、オリジナルプリントの消失による質の低いデューププリントやフィルム断片しか現存していないなどの保存状態の悪さに由来する誤解である。

1927年(昭和2年)に世界初のトーキーとされる『ジャズ・シンガー』が出現するまでは、すべてがサイレント映画であった。音声がないという制約から様々な映画的テクニックが開発され、それは現代の映画にも引き継がれている。登場人物のせりふは字幕を挿入することで表現したが、俳優の演技は大袈裟なものにならざるを得なかった。

上映に際してはオーケストラやバンドによる音楽伴奏が付くことが多かった。日本では、上映中の映画の進行に合わせて、その内容を解説する活動弁士(活弁士)が活躍し、徳川夢声のような人気弁士も現れた。

トーキーが実用化されてからは、サイレント映画に音楽のサウンドトラックを付加したものが上映され、これをサウンド版という。トーキー以後の時代にも、サイレント映画(多くは厳密にはサウンド版)として製作された作品も存在する。ジャック・タチ、メル・ブルックス、アキ・カウリスマキらが、「その後のサイレント映画」を監督した映画作家である。

主なサイレント映画

月世界旅行(1902年、フランス、ジョルジュ・メリエス監督)
大列車強盗(1903年、アメリカ、エドウィン・S・ポーター監督)
ファントマシリーズ(1913年 - 1914年、フランス、ルイ・フイヤード監督)
カビリア(1914年、イタリア、ジョヴァンニ・ペストローネ監督)
國民の創生(1915年、アメリカ、D・W・グリフィス監督)
イントレランス(1916年、アメリカ、D・W・グリフィス監督)
散り行く花(1919年、アメリカ、D・W・グリフィス監督)
カリガリ博士(1919年、ドイツ、ロベルト・ヴィーネ監督)
キッド(1921年、アメリカ、チャーリー・チャップリン監督、主演)
椿姫(1921年、アメリカ、レイ・C・スモールウッド監督)
愚なる妻(1922年、アメリカ、エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督)
吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年、ドイツ、F・W・ムルナウ監督)
鉄路の白薔薇(1923年、フランス、アベル・ガンス監督)
巴里の女性(1923年、アメリカ、チャーリー・チャップリン監督)
ロイドの要心無用(1923年、アメリカ、フレッド・ニューメイヤー&サム・テイラー監督)
幌馬車(1923年、アメリカ、ジェームズ・クルーズ監督)
眠るパリ(1923年、フランス、ルネ・クレール監督)
キイン(1923年、フランス、アレクサンドル・ヴォルコフ監督)
嘆きのピエロ(1924年、フランス、ジャック・カトラン監督、主演)
結婚哲学(1924年、アメリカ、エルンスト・ルビッチ監督)
グリード(1924年、アメリカ、エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督)
最後の人(1924年、ドイツ、F・W・ムルナウ監督)
ニーベルンゲン(1924年、ドイツ、フリッツ・ラング監督)
バグダッドの盗賊(1924年、アメリカ、ラオール・ウォルシュ監督)
黄金狂時代(1925年、アメリカ、チャーリー・チャップリン監督、主演)
オペラ座の怪人(1925年、アメリカ、ルパート・ジュリアン監督)
ステラ・ダラス(1925年、アメリカ、ヘンリー・キング監督)
ビッグ・パレード(1925年、アメリカ、キング・ヴィダー監督)
戦艦ポチョムキン(1925年、ソ連、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督)
ヴァリエテ(1925年、ドイツ、E・A・デュポン監督)
雄呂血(1925年、日本、二川文太郎監督)
ベン・ハー(1925年、アメリカ、フレッド・ニブロ監督)
雀(1926年、アメリカ、ウィリアム・ボーディン監督)
真紅の文字(1926年、アメリカ、ヴィクトル・シェーストレム監督)
母(1926年、ソ連、フセヴォロド・プドフキン監督)
狂つた一頁(1926年、日本、衣笠貞之助監督)
愛傷(1926年、日本、石田民三監督)
キートン将軍(1927年、アメリカ、バスター・キートン監督、主演)
ナポレオン(1927年、フランス、アベル・ガンス監督)
アッシャー家の末裔(1927年、フランス、ジャン・エプスタン監督)
女優ナナ(1927年、フランス、ジャン・ルノワール監督)
暗黒街(1927年、アメリカ、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督)
つばさ(1927年、アメリカ、ウィリアム・A・ウェルマン監督)
第七天国(1927年、アメリカ、フランク・ボーゼイジ監督)
サンライズ(1927年、アメリカ、F・W・ムルナウ監督)
メトロポリス(1927年、ドイツ、フリッツ・ラング監督)
思ひ出(1927年、アメリカ、エルンスト・ルビッチ監督)
忠次旅日記(1927年、日本、伊藤大輔監督)
群集(1928年、アメリカ、キング・ヴィダー監督)
風(1928年、アメリカ、ヴィクター・シェーストレム監督)
裁かるゝジャンヌ(1928年、フランス、カール・テオドール・ドライヤー監督)
アンダルシアの犬(1928年、フランス、ルイス・ブニュエル監督)
帰郷(1928年、ドイツ、ヨーエ・マイ監督)
紐育の波止場(1928年、アメリカ、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督)
パンドラの箱(1929年、ドイツ、ゲオルク・ヴィルヘルム・パープスト監督)
アスファルト(1929年、ドイツ、ヨーエ・マイ監督)
カメラを持った男(1929年、ソ連、ジガ・ヴェルトフ監督)
大地(1930年、ソ連、アレクサンドル・ドヴジェンコ監督)
ニースについて(1930年、フランス、ジャン・ヴィゴ監督)
街の灯(1931年、アメリカ、チャーリー・チャップリン監督、主演)
大人の見る繪本 生れてはみたけれど(1932年、日本、小津安二郎監督)
涙の曙(1932年、日本、三星吐詩夫監督)
伊豆の踊子(1933年、日本、五所平之助監督)
滝の白糸(1933年、日本、溝口健二監督)
夜ごとの夢(1933年、日本、成瀬巳喜男監督)
折鶴お千(1935年、日本、溝口健二監督)

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